製品普及の第4ステージ

今回のエントリはIT関連という前提です。
ITを使ったシステムは以下のような3つの段階を経て、世の中に普及していきます。

○黎明期
新技術が登場した時、その技術を導入するためには多大なパワーが必要になります。エンジニアの技術力はもちろんですが、海のモノとも山のモノともわからないものにお金や資源を投入するためには、関係者を納得させるための政治力も必要なためです。この時期に関わるエンジニアは、先端技術を自分の手で切り開くことが求められており、非常に優秀です。

新技術をなんとか軌道に乗せるために多大な努力をするのですが、新技術であるが故に混乱も多くなかなか安定しません。その混乱の中で、エンジニア自身の経験値が非常に高まる時期です。ただ、中で携わっている人にとっては経験値が上がっているという意識は無く、ただただ安定することを目指して全力で頑張っています。

○普及期
「競合他社が導入しているらしい」という動機で、急速に普及する時期です。黎明期に頑張った人たちが残した前例があるため、混乱が収束する可能性は示されているのですが、具体的にどのような方法で実現すれば良いのかわかりません。世の中に断片的に散らばっている情報を収集しつつ、混乱を収束するために一生懸命がんばっています。

この時期に携わるエンジニアは飛びぬけた技術力を持っていないこともありますが、この混乱の中で経験値を高め、次の新技術導入の際には、黎明期から携われる技術力を身につけるエンジニアが出現します。

○成熟期
成功するための方法論も確立されているため、この時期に混乱が起きることはほとんどありません。普通にやっていれば、普通に導入できます。
良い意味で「枯れた技術」と評価されます。


さて、今回のエントリで取り上げたいのは「この後」の段階です。

○衰退期
一見すると成熟期とほとんど変わりません。しかし、黎明期や普及期に関わったエンジニアが現場を去り、様々なノウハウが現場から失われていきますが、そのことに経営者や管理者は気付きません。何も問題が起きないのですから当然です。あえて多大なコストをかける必要はありませんから、日常の業務は「標準化」の名のもとにマニュアルとして整備されます。エンジニアもマニュアルに書かれている通りに仕事を進めますから、モチベーションもなかなか上がりません。場合によっては、中国やインドにアウトソースされていることもあります。


衰退期に達しているシステムには以下のような特徴があります。

  • 目の前で動いているシステムは、一見すると何の問題もなく動いている
  • ソフトウェアやハードウェアの保守やサポート期限が切れている
  • システム全体を把握している人が誰もいない
  • セキュリティも穴だらけであるが、それを修正するだけの予算もエンジニアも現場にいない
  • 現場関係者は薄々「ヤバイ!!」と気がつき始めているが誰も口に出さない

システムには寿命があります。マンションでも定期的に大規模修繕が入るように、システムも定期的に大規模修繕が必要です。ITシステムが経営を支えている会社の方は、この点を意識しなければなりません。倒壊してからでは手遅れなのですから。