スキルの賞味期限が短くなっている

http://www.asahi.com/job/news/TKY201301080074.html

いろいろな歪が出てきていると感じます。
私は、追い出し部屋に送られる世代のど真ん中ですので、同じ立場に立っていた可能性もあったわけです。(今の立場だと追い出し部屋どころか、即刻無職になってしまうわけですけど。)

この問題の原因には、

(1) 社員の保有スキルと企業の要求スキルとのズレの存在
(2) 正社員の解雇が非常に困難

という大きな二つの問題があると考えています。特に(2)の問題について企業の視点から見ると、「解雇が難しいから、精神的に追い込んででも自主退職させる」という方法を取らざるを得ないし、社員の視点で見ると「解雇されると再就職が難しいから会社にしがみつくけど、精神的に疲弊して最終的には退職する」という結果になってしまいます。結局、全員が不幸になってる。ただでさえ再就職が難しいのに、精神的に疲弊してしまうと、さらに再就職が難しくなってしまうという悪循環も付いてきます。

そして、何故再就職が難しいかというと、「正社員の解雇が非常に困難であるため、採用側企業が躊躇してしまう」ということが原因の一つです。だから解雇規制撤廃派は、正社員の解雇条件を緩めることで雇用の流動性を高めることを主張しています。雇用の流動性を高めれば、再就職も簡単になるという論理です。

解雇規制の緩和が善か悪かは別にしても、私は近いうちに解雇規制は緩和されると考えています。それは解雇規制という仕組みが、企業で発生している現実問題に対応できていないためで、それは仕組みと現実の間に歪が発生しているということを意味しています。歪は放置していると、必ずどこかで弾けてしてしまいます。そして、先送りにすればするほど、その影響は大きくなる傾向があります。だから、解雇規制の緩和は、「やるか/やらないか」という課題ではなく、「いつやるか」という段階になっています。事実、日本は経済協力開発機構OECD)から、この問題を是正するように求められています。


少し前の社会だと、学校で学んだ知識や入社直後に身に付けたスキルと、その延長線上で身に付けたスキルの賞味期限は40年以上あったんだと思います。会社員の入社から定年までの期間がおよそ40年なので、絶対的な体力が必要な仕事を除けば、会社員は定年まで勤め上げることができました。ところが、現在のように解雇対象が30代になってしまっているのは、解雇理由が従来のような賃金の高止まりにあるのではなく、冒頭に書いたように社員の保有スキルと企業の要求スキルのズレが大きくなってしまったからだと思います。これは、20代前半で身に付けたスキルの賞味期限が、15年〜20年程度になってしまったということを意味していて、今後この期間はどんどん短くなっていくと予測しています。

今後も安定して仕事を続けていくためには、35歳〜40歳でスキルの再構築や業務内容の転換を受け入れる覚悟が必要になるでしょう。きっと10年後には、この時期が30歳〜35歳と45歳〜50歳くらいの2回に増えのではないかとも思います。このスキルの再構築は、大学・専門学校等の教育機関や企業内研修組織が請け負うことになるんでしょうけど、そういう点においては、これからの会社員に求められるスキルは、「スキルを再構築するためのスキル」ということなのかもしれません。

大変な世の中になったなあ。