企業不祥事を組織構造の違いから考察してみる

個人情報の流出や食品偽装など、事業活動上の不祥事がたくさん発生してます。
いくつかの事例は悪意を持った組織的な行為もありますが、不祥事の中には下請け企業(の下請け企業)で発生しているものも多くあるように感じます。今回は、組織構造の違いが、不祥事の発生にどのような影響を与えるのかを書いていきます。もちろん、今回のエントリは理由付けの一つであって、全ての不祥事を防止できると考えているわけではありません。あくまで「こういう考え方もあるんじゃないかな?」という位置づけです。

どのような組織で仕事をしているかによって考え方は異なると思いますが、私の場合は一緒に仕事をする人を選ぶときに「その人が信頼できるかどうか」という点を大きな判断要素にしています。例えば、きちんとお金を支払ってくれるか、お願いした仕事を完遂してくれるか、必要な知識やスキルを保有しているか、問題が発生した時に逃げ出さないか、といった点です。同様に私自身をアピールする時も、他人から信頼を得られるように振舞うことを大切にしています。

仕事をしていると、どうしても胡散臭い人に出会うことがあります。「本当にお金を払ってくれるのだろうか?」「重要なことを隠しているのではないだろうか?」「いざとなったら逃げ出すのではないだろうか?」といったような雰囲気を醸している人です。もししたら、本当は真面目できちんと仕事をする人かもしれませんよ。でも、私には「信頼できない人」としか見えないんですよね。こういう人とは一緒に仕事をしないようにしているので、「本当はいい人」との機会を逃している可能性はあります。しかし、その可能性があったとしても、信頼できる人と仕事をしたほうがプラスだと考えています。

私は一緒に仕事をする相手を選択する時の「拒否権」を持っています。だから「信頼できそうにない人」との仕事を断ることができます。でも、もし私が拒否権を持っていなかったらどうなっていたでしょう?きっと私が面談した人や会社の情報を、決裁権を持っている上司に報告し、誰と仕事をするか選んでもらわなければなりません。それでは、その報告書には何と書けばよいでしょうか。「あの人は、なんとなく信頼できないんで取引は止めたほうが良いと思います。」とは書けません。直属の上司くらいだったら、このような報告もアリかもしれませんが、上司の上司への報告になってしまうと無理です。そうなると、○○の資格を持っているとか、ISOの○○を持っているとか、取引実績とか財務状況などの定量的な情報を利用して報告することになります。逆に表現すると、測定可能な見掛けの数字が優れている相手ほど、採用しやすくなるのです。

定量的な情報を利用することが悪いことだとは思いません。限界までコストを圧縮したい消耗品の購入だとか、どこに頼んだとしても品質に大きな差がないものは、定量的な要素に基づいて判断しても良いと思います。でも、もし失敗した時に会社の経営が吹っ飛ぶような案件だったらどうでしょうか?食品会社が原材料の仕入れを、見積書の金額の安い順に仕入れていくとか。企業の営業機密を扱うシステムの運用を、プライバシーマークを持っているという理由だけで選択するとか。怖いですよね?そして、問題が発生すると「我々も被害者だー!!」って言うことになる。やっぱり大切な仕事を任せる時には、具体的に誰が手を動かすかは大事な要素だと思うのです。

「信頼できるかどうか」というフワフワした情報を利用する時に、取引相手について調査をする人(現場担当者)と、取引相手を誰にするかを決定する人(決裁権者)が離れていると、「信頼できるかどうか」というフワフワした情報は扱いにくいのではないかと思います。階層が深い組織であるならば、数値化できる情報のほうが報告しやすくて便利です。株主さんへの言い訳にも使いやすいです。だから、どうしても定量的な情報を重視してしまうようになります。しかし、不祥事を防止するためには、フワフワした情報こそ大切にしなければならないと思うのです。だから、組織階層が深くなりがちな大企業ほど、潜在的なリスクは大きいと思うのです。

このような問題を防止するためには、取引相手を調査する担当者を決裁権者の直轄にするとか、現場担当者に決裁権(または拒否権など)を委譲するなども一つの解決策なのではないかと思います。