伊賀泰代著「採用基準」を読みました

伊賀泰代氏の「採用基準」を読みました。

採用基準

採用基準

キャリア形成コンサルタントの著者は、17年間マッキンゼー・アンド・カンパニーに務め、コンサルタント業務に5年間従事した後、コンサルタント採用業務に12年間従事しています。マッキンゼーという外資系企業に17年間も在籍するというのは、とてもとても長い経験です。この時の経験を通して、「これからの時代にグローバルビジネスの前線で求められるのは、どのような資質を持った人なのか」、「日本ではなぜそれらの資質が正しく理解できないのか」という点について書かれています。本書のタイトルは「採用基準」ですが、副題である「地頭より、論理的思考力より、大切なもの」のほうが内容を適切に表しています。

目次の中に書かれているので書いてしまいますが、これらの解として著者は「リーダーシップ」を挙げています。そして日本社会において理解されている「リーダーシップ」と、著者の考える「リーダーシップ」のズレについて指摘しています。

本書の大半では「マッキンゼーコンサルタントたちが、どのようにしてリーダーシップを身に付けているのか」、「リーダーシップを身に付けることで、どのように世界を変えることができるのか」ということが書かれています。マッキンゼーコンサルタントとして活動していた時のエピソードも書かれていますが、若干残念に感じたのは、臨場感を持ってそれらの経験を感じ取れなかった点です。守秘義務もあるため詳細が書けないという理由もあるかもしれませんが、マッキンゼーのような文化を持つ企業での経験が無い私には、著者が経験したことを臨場感を持って受け取ることができないのかもしれません。

本書の中で面白い視点だなと感じたのは「日本全体でのリーダーシップの総量が足りない」という表現です。確かに日本社会は強力なリーダーシップを持つ人物の登場を、ただ口を開けて待っているだけのところがあります。強力なリーダーシップは銀の弾丸で、すべての問題を瞬時にかつ何の摩擦も発生させることなく解決できると信じているところがあると思います。これらの問題の原因を、「日本全体でのリーダーシップの総量が足りない」という点においたのは、非常に興味深かったです。だから、リーダーになる人以外にもリーダーシップが必要で、小学校や中学校にリーダーシップに関する教育が必要なのだという主張にも共感が持てました。

著者と私とのバックグラウンドの違いからか、細かいところでは「それは違うんじゃないかな?」と感じる点もありましたが、このようにバックグラウンドの違う方の意見というのは、とても興味深いですしワクワクして読めますよね。


主題とは異なりますが、本書を読んでいて感じたのは、「著者はマッキンゼーという職場を愛しているんだな」ということです。すでに退職した職場のことを、これだけの愛情を持って語れるというのは素晴らしいことだと思います。私はこれまでに2つの企業を退職した経験を持っていますが、そこでの経験を著者のように愛情を持って語ることは残念ながらできません。この点については、私自身にも反省すべき点は多いのですが、単純に「羨ましいな」という印象を受けました。

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それはそうと、この本を読んでて何かが足りなかったんですよね・・・。うーん・・・。あっ!!

そんじゃーね!

参考:2011-09-27