人間50年、夢幻のごとくなり

私たちが日常生活をしていて考えることができる"最も長い期間"は、自分の一生分の時間だと思います。
そのため、100年、200年、1000年、1万年という単位の時間を、通常の思考の中に取り入れることはとても難しいことです。

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中東諸国では、今でも戦乱が続いています。
しかも宗教や民族の対立を発端としたものです。私たちが日本に住んでいると「話合いで和解の道は無いものなのか」と思います。
けれども、日本でもほんの70年前は戦争の真っ只中でした。
その当時に成人だった人の中で、今でも存命中の方はたくさんいらっしゃいます。そのくらい最近まで戦争をしていたのです。
しかし、私たちの世代から見ると、あの戦争は遥か昔の出来事のように感じてしまいます。

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北朝鮮金正日氏が死去した後、息子が独裁政権世襲しました。
しかも軍隊を中心とした独裁政権で、国民の犠牲の上に成り立っています。私たちが日本に住んでいると「独裁政権が3世代も続くなんて恐ろしいな」と思います。
けれども、日本でもほんの150年前は独裁政権の真っ只中でした。
しかも、3代どころか15代も続いた独裁政権です。そんな政権がつい最近まで存在していたのです。
しかし、私たちの世代から見ると、江戸幕府は遥か昔の出来事のように感じてしまいます。

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東日本大震災とそれに伴う原発事故の発生により、活断層は危険だという認識が広まりました。
しかも活断層は日本各地に存在していて、その上に重要な建築物が建てられていることもあります。私たちが日本に住んでいると「危険な活断層の上にそんなもの作るなよ」と思います。
けれども、活断層は「過去数十万年の間に地殻変動を繰り返していて、今後も活動する可能性のある断層」のことだと言われています。
ヒトと猿の区別がつき始めたのが数百万年前という説がありますから、活断層が活動していたのはつい最近のことなのです。
しかし、私たちの世代から見ると、多くの活断層が活動したのが遥か昔の出来事のように感じてしまいます。

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今も世界で様々な出来事が起きています。現代を生きている私たちの価値観で評価すると、愚かな行為にしか見えないこともたくさんあります。逆に既に私たちの身の回りから失われた素敵なものが数多く残っている地域があります。
この長い歴史全体を眺めることができる立場があるとすると、私たちが生きている時間というのは誤差の範囲であり、瞬きくらい一瞬の出来事なのかもしれません。