決断場面におけるNULLとゼロの大きな違い

システム開発に携わっていると、"NULL"という単語を目にする機会がよくあります。
"NULL"は「何も無いこと」を表す単語です。似たような単語で"ゼロ"というものがありますが、こちらは「存在していないという情報」があるのに対して、"NULL"は「存在していないという情報すら存在していない」ということです。ゼロが「無い」ことを表すのであれば、"NULL"は「何も無い」ことを表しているとも言えます。


社会生活を送っている中で、何かを決めなければならない場面は必ずあります。10代〜20代にかけては、おおよそ3年おきに決めなければならない場面がやってきます。具体的には進学先を決めたり、将来の職業を決めたり、就職する会社を決めたりしなければなりません。これらの決断場面においては、進むべき道がいくつかに分かれていて、どの道に進むかを選択します。この年代での決断では、どの決断をしたとしても「進まなければならない」ということには変わりありません。

しかし社会人になってくると決断場面における選択肢が大きく変わります。「進まない」という選択肢が出てくるのです。

例えば結婚を選択しなければならない時を考えてみましょう。「Aさんと結婚するか、Bさんと結婚するか」という決断は、10代での決断場面とさほど大きく変わりません。「結婚する」という道は決まっていて、「どちらの相手を選択するか」ということだからです。しかし実際に結婚を選択しなければならない場面になった時、「どちらとも結婚しない」という選択肢もあります。これが「進まない」という選択肢です。今回のエントリでは、この選択を「ゼロの選択」と呼ぶことにします。

このような決断場面は他にもあります。「今の仕事に不満がある」「成長できているか不安がある」「もっと他にやりたいことがある」そのような場面に出会った時、転職という選択肢が出てきます。この時の選択肢は、下のようになります。

(1) A社に転職する
(2) B社に転職する
(3) 今の会社に残る

ここでは(3)がゼロの選択です。

私たちが生活している中で、このような決断場面はたくさんあります。その時にはたくさん考えて結論を出さなくてはなりませんが、「考えることを放棄する」という行動を取ることもできます。今回のエントリでは、この選択を「NULLの選択」と呼ぶことにします。

ここで注意しなければならないのは、NULLの選択をすると、結果的にゼロの選択をしたのと同じ結果になるということです。ネットでお買い物をする時に、「メールマガジンを受信する」に始めからチェックが入っているように、ゼロの選択が行われるのです。本来であれば一度立ち止まって考えなければならないのですが、考えることを放棄するとゼロの選択をしたのと同じ結果になってしまうのです。

ここでは「ゼロの選択をするな」ということを言いたいのではありません。「NULLの選択を止める」ことを伝えたいのです。頭を使って考えた結果、ゼロの選択をすることは素晴らしいことです。あえて世間の流れに逆らって生きることばかりが素晴らしいことではありません。世間の流れに乗るという選択も、同じくらい尊重されるべき決断だからです。

日々の決断場面でNULLの選択ばかりしていると、頭を使って考える能力が衰え、決断場面が目の前にあることにすら気付かなくなります。これは非常にもったいないです。NULLの選択を止めることで、きっと有意義な人生を送ることができるようになると思います。