モノをつくる人のココロ

およそ知恵と経験を生かしてモノを作っている人には、ある程度共通した想いがあるのではないかと思います。


陶器市に行くと、普段は表に出ることがない作家さんが直接販売していることがあります。自分の作品を買ってくれる人と接することができる貴重な機会でもあるからです。
このような陶器市に集まるお客さんには様々なタイプの人がいます。このような中で、一言目には「まけて〜」という人がいます。
私はこのような言動を「良い行為」とは思えません。もちろんお祭りですので、多少の値引きは覚悟の上で出店していると思います。しかし、作品の価値やそこに込められた想い、作品を作るまでの苦労を想像することなく値引き交渉をするのは、作家さんのそのような想いを踏みにじる行為であると考えているからです。


ちょっとした地方に行くと、畑の近くで野菜が格安で売られていることがあります。このような即売所には店員さんはいません。料金箱が置いてあり、料金を入れて品物を持って帰る仕組みです。
このような即売所から、料金を支払うことなく野菜を持っていく人がいるそうです。
この場合、「窃盗」という犯罪行為になるのですが、手間暇かけて野菜を育てた方の想いを踏みにじる行為でもあります。


飲食店を経営している友人や知人がいるとします。ここでは、「料理人」としてお店を経営している人のことです。
このお店で食事をした時に、あなたはきちんとお金を払っているでしょうか。それとも友人だからと正規の金額とは異なる特別価格でご馳走になっていますか?
例えば、イタリアン料理のお店を経営している友人から、食事を食べたときに「ワインをサービスするよ」と言われるのは良いと思います。しかし、友人関係ということを利用して、無理な値引きをお願いしていることはありませんか?


あなたの同僚でプログラムを書ける人がいたとします。少なくてもあなたよりもプログラムを書くことができる人です。
この同僚に仕事で助けてもらった時に、感謝の言葉を伝えているでしょうか。それとも同僚だし手助けして当然だと考えていますか?
例えば、あなたがマネジメントをしているプロジェクトで問題が発生したとします。不幸にもあなたのプロジェクトチームに、この問題を解決するスキルを持った人はいません。緊急事態でもあるので、別のチームの同僚のプログラマに助けてもらいました。この時、助けてもらった同僚に感謝の言葉をきちんと伝えていますか?


これと同じことはモノを作っている人に限りません。

  • 知り合いの医者に健康相談を無料でやってもらう
  • 知り合いのデザイナーに無料で絵を書いてもらう
  • 知り合いの税理士に無料で税務相談をする
  • 知り合いの会計士に・・・


ここで伝えたいのは、彼らの能力は天から降ってきたものでは無いということです。それ相応の努力によって身につけ、さらにプロとしてやっていけるだけの力を常に維持し続けるための努力をしているのです。「知り合い」という特権を利用して、市場価格よりはるかに安い対価で仕事を依頼することは、彼らの能力を過小評価する行為で最も避けるべき行為です。彼らがプロとしてやっていくための能力をどのようにして身に付けたのか、ちょっとだけ想像力を働かせてみましょう。