「平均の意味を理解していない大学生」という記事

大学生の24%が「平均」の意味を正しく理解していないなど、基礎的な数学力、論理力に大きな課題があることが、日本数学会(理事長・宮岡洋一東京大教授)が実施した初の「大学生数学基本調査」で明らかになった。

(中略)

全問正答した学生は、わずか1・2%だった。「偶数と奇数を足すとなぜ奇数になるか」を論理的に説明させる中3レベルの問題の正答率は19%。小6で学ぶ「平均」についても、求め方は分かるが、「平均より身長が高い生徒と低い生徒は同じ数いる」などの正誤については誤答が目立ち、中堅私大では半数が誤答だった。

「平均」の意味、大学生の24%が理解せず : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

「「平均」の意味、大学生の24%が理解せず」という記事がありました。
それでは「平均の意味を理解している」というのは、どのようなことなのでしょうか?
この調査を実施した日本数学会のWebページに調査結果がありましたので、どのような調査だったのか引用します。(引用元:http://mathsoc.jp/comm/kyoiku/chousa2011/surveyslip0955.pdf(PDF))

ある中学校の三年生の生徒100人の身長を測り、その平均を計算すると163.5cmになりました。この結果から確実に正しいと言えることには○を、そうでないものには×を、左側の空欄に記入してください。

(1) 身長が163.5cmよりも高い生徒と低い生徒は、それぞれ50人ずついる。
(2) 100人の生徒全員の身長をたすと、163.5cm × 100 = 16350cmになる。
(3) 身長を10cmごとに「130cm以上で140cm未満の生徒」「140cm以上で150cm未満の生徒」・・・というように区分けすると、「160cm以上で170cm未満の生徒」が最も多い。

この設問の(1)〜(3)の全てに正しく○と×を付けた回答者のみが、「平均の意味を理解している人」です。1つでも間違えると「平均の意味を理解していない人」です。
この設問、身長ではなくて「貯蓄額」や「年収」にすると、正答率が上がったかもしれませんね。

もう一問。

2次関数 y = -x2 + 6x - 8 のグラフは、どのような放物線でしょうか。重要な特徴を、文章で3つ答えてください。

1.
2.
3.

この3つの回答に正しく答えられないと、「論理を整理された形で記述する力が不足」しています。

さて、最初に引用した新聞記事と実際の設問を見て、どのように感じたでしょうか?
「適切でしょ。こんな問題もわからないの?」と感じた方、「この問題の正答で、その結論に持って行く?」と感じた方もいるでしょう。

私は、「典型的な「最近の大学生は〜」論調である」ということと、「学会主催の調査は、その学会と対象分野の重要性をアピールするための活動である」ということを感じました。
あと、大学生だけを対象にしたものではなく、全国紙の新聞記者を対象にした調査も是非実施して欲しいです。
この調査結果に基づく提言は、日本数学会のページで公開されていますので、是非参考にしてみてください。(他の設問と回答も掲載されています。)