原発再稼働問題から見る、原子力技術の未来への不安

原発再稼働が社会で大きな問題になっています。主に「反原発か否か」という二元論による議論が繰り広げられている現在、本当に将来のことを考えて議論できているのかという点には疑問を抱いています。この点については冷静に意見表明をできるタイミングが来たら、改めて書きたいと考えていますが、そのようなタイミングが本当に訪れるのかという不安もあります。

今回のエントリでは、原発の是非とは違った点について書いていきます。

原子力発電を行うと、放射性廃棄物が排出されます。「廃棄物」と書いていますが、これは産業廃棄物のように扱うことはできず、原子力基本法という法律によって取扱方法が規定されています。このように、特別な法律で規定しなければならないほど、放射性廃棄物の取り扱いはやっかいな問題であり、特に使用済み核燃料は人間の寿命よりも遙かに長い期間をかけて処理しなければなりません。

さて、ここで3つの現実を提示します。

  • 日本には既に使用済み核燃料が保管されており、引き続き処理しなければならない
  • 周辺国だけでも大量の原子炉が稼働しており、そこからは引き続き使用済み核燃料が排出されている
  • 原子力技術が実用されてから100年程しかたっておらず、発展途上の技術である

一般的にこのような技術の場合には、基礎研究分野として大量のリソースを投入して問題解決を図るための技術を研究・開発します。ここで指している技術とは、

  • 現存している放射性廃棄物を安全に保管・処理するための技術
  • 他国を含めて原子力事故が発生した際に、その事故を収束させるための技術
  • 放射性廃棄物処理の安全性と効率性を向上させるための技術

のことです。


今、日本の原子力政策は大きく揺れています。「電力会社の社員である」「電力会社の関係者である」というだけで、世間から冷たい目で見られています。30年後に原子力発電を利用するのかどうかという点においても世論が分かれています。

このような現実の中で、今後社会に出る若者が「原子力技術に関わっていこう」と考えるでしょうか?おそらく「原子力技術を学びたい」という大学生がいたとしても、両親は全力で止めるのではないでしょうか?社会に誇りをもって原子力技術に従事することができるでしょうか?原子力技術に夢や希望を持って関わっていこうとする若者が出てくるでしょうか?

私が危惧しているのは、

今後も原子力技術の発展は不可欠であるにも関わらず、人材の供給が止まってしまう

という点です。

これは、日本が原子力発電を続けるか否かに関わらず意識しなければならない問題です。放射性廃棄物の問題は、過去を責めても問題は何も解決しません。(検証することで、将来発生する可能性のある問題を防止することはできるかもしれません。)放射性廃棄物は現存しており、人間の寿命よりも長い期間をかけて処理しなければならないのです。つまり現存している技術者だけで対処できる問題ではなく、若い技術者が積極的に関わっていかなければならないのです。世界を見渡せば、周辺国だけでも使用済み核燃料は排出され続けています。世界はこの問題に対処しなければならないのに、日本だけが技術を放棄することはできません。

日本が原子力発電を続けるかは使いうちに結論が出ることでしょう。しかし、世界全体で見ると原子力発電は確実に増加します。

この現実の前で、将来の若者たちが夢や希望を持って原子力技術を目指せる社会を創らなければ、30年後、50年後、100年後に新たな原子力事故が発生する要因になってしまうと思うのです。