大企業のほうが成長が遅いというけれど・・・

ちょっと前の記事になりますが、ちきりんさんの「2013-11-13」を読みました。私は中小企業と大企業の両方で働いた経験があるため、私の意見について書いておきたいと思います。

私も基本的にはちきりんさんと同じ考えで、大企業とベンチャー企業外資系企業を比べたら、大企業のほうがビジネス分野における成長スピードは遅いと考えてます。ただし、ひとつだけ条件があります。それは、

「途中で脱落しないこと」

です。

私の場合、最初に就職したのはベンチャー企業(という名の中小企業)でした。その後、転職で大企業に入社しています。ビジネス分野における成長幅だけを見れば、最初に入社した会社のほうが会社の規模に関わらず確実に大きいです。企業規模は関係ありません。

私が最初に入社した会社は研修制度などが整っておらず、現場で様々な失敗を繰り返しながら勉強してきました。その分いろいろなことを経験させてもらえたことはとても良かったと思いますし、その時の経験は今の生活にも大きな影響を与えています。ところが、この会社で働いている時に過労でダウンしてしまいました。途中で脱落してしまったのです。こうなってしまうと、これまでの成長スピードがどうこう言っていられなくなります。生きることに対して、大変なエネルギーが必要になってしまったのです。ただし、脱落しなければ大きな成長を手に入れることができたと思います。そういう意味では、「途中で脱落さえしなければ」ベンチャー企業外資系企業のほうが成長スピードは速いんじゃないかな。

大企業と中小企業を比べれば、大企業のほうが労働環境が整っている傾向があります。普通の体力と普通の精神力を持った人間が普通に仕事をしていれば、過労でダウンしてしまうことは中小企業に比べれば少ないです。これは、「そういう傾向がある」というだけで、大企業であれば長時間労働サービス残業が無いということを意味しているのではありません。大企業であっても長時間労働が常態化している企業もありますし、大企業であれば部署によって文化が大きく異なります。配属される部署によっては中小企業以上の過重労働を強いられる場合もあります。ただし、そのような事態が発生する可能性は比較的少ないと思います。

学生時代に起業すれば、ベンチャー企業に所属するよりも速いスピードで成長することができるかもしれません。しかし、社会人経験のない普通の体力と普通の精神力を持った人間が、そのような環境下で脱落せずに継続的に成長できるかと言えば、かなりの疑問があります。

成長スピードよりも「収穫量」のほうが大事

私が大事にしたいと考えているのは、成長スピードよりも人生全体での収穫量のほうが大事なのではないかということです。

収穫量が何であるかは人それぞれです。生涯賃金を収穫量と定義する人もいれば、仕事を通して得られる満足感を収穫量に定義する人もいると思います。仕事はお金を稼ぐための手段であって、それ以外の分野に収穫量を求めている人もいるでしょう。ただし、自分の人生で何を収穫しに行くのかは、できるだけ早く決めたほうが良いです。そのほうが確実に収穫量は多くなるから。

きっと今の20代の人が定年を迎える頃には、定年になる年齢が70歳くらいになっていると思います。もしかしたら、定年制度自体が崩壊しているかもしれません。そのような世の中で、最初の5年とか10年とかで燃え尽きてしまう人生を歩むよりは、長期的な視野を持って歩んでいったほうが良いと思います。もちろん、収穫する目標を人生の途中で変更するのもアリですし、体力と精神力に自信があるのであれば、スタートダッシュで一気に収穫量を増やすという選択肢もアリです。

大企業を選択するほうが賢明かというと、そういうこともない

それでは大企業に入社したほうが賢明かというと、そうとも言い切れないと思います。

大企業に新卒で入社してきた方々を見ていると、「この会社以外では生きていけないだろうなあ」という若者が量産されています。これも、「そういう傾向がある」というだけで、大企業に入社した全員が成長スピードが遅いかというと、そのようなことはありません。そういうことではありませんが、所属している会社以外で通用する能力を身につけていないと、10年後や20年後に所属企業が事業不振に陥ったとき、生きていくのが困難になります。大企業とはいえ、永久に安定した経営が続けられるという保証はありませんからね。


ちなみに、私は一度脱落してしまいましたが、回復した後に引き続きIT業界で働いています。今でも全快と言えるほど回復はしていませんが、まあまあ普通に働けていると思いますし、今働いている会社をリストラされたとしても、まあまあ生きていけるくらいの仕事はできると思います。私の周囲には、IT業界の仕事に疲れてしまい、全くの他業界に移った人もいます。彼は転職先で彼女を見つけて結婚して幸せな家庭を築いていて、そのままIT業界で仕事をしていたら手に入れることができなかったであろう幸せな人生を歩んでいます。何が幸せに結びつくかなんて、わからないものです。

将来を真剣に考えることはとても大切なことですが、成長スピードばかりに囚われていると、意外な落とし穴に嵌ってしまう可能性もありますし、手に入れられるはずの幸せを逃してしまう可能性もあるので注意しましょう。